2022年度研究テーマ

自動押付力調整機構を搭載したベルトクライマーの開発

 本研究室では宇宙エレベータークライマーの機構について長年研究してきている。宇宙と地上を結ぶテザーとしては、宇宙空間ではスペースデブリなどの影響で破損しても修復可能なベルトテザー、地上付近では風などの環境の影響を受けにくいロープテザーが有利とされている。

 本研究では、このうちベルトテザーに対して自動押付力調整機構を搭載したクライマーの開発を行っている。これはテザーをローラで挟み込んで摩擦力により昇降する構造を想定し、その挟み込む力つまりテザーへの押付力を調整して、自動で適切な押付力に制御するクライマーの開発及び研究である。ベルト押付力調整クライマーについては、数年前からいろいろな機構で試みてきているが、ほとんどは競技会(SPEC)用に製作してきており、基本特性の検証や制御などの理論検討はほとんど行われてきていなかった。

 ローラの押付力が大きいとき、すべりを抑えることができる反面、クライマーを駆動させるモータの負荷は増大する。反対に、ローラの押付力が小さいとき、モータの負荷を減らすことはできるが、すべりが大きく発生する。すべりについてはローラが削れる可能性が高くなり、万が一の場合落下の危険もある。負荷については、バッテリーの持続時間とも密接に関係する。本研究では、すべりや電費という効率を考慮して、クライマーの始動時と定常時など駆動状態に合わせて、最適な押付力を自動的に実現するためのクライマーの機構や制御の有用性について理論的な面から検討している。

自動押付力調整機構を搭載したロープクライマーの開発

 本研究室では宇宙エレベータークライマーの機構について長年研究してきている。宇宙と地上を結ぶテザーとしては、宇宙空間ではスペースでブリなどの影響で破損しても修復可能なベルトテザー、地上付近では風などの環境の影響を受けにくいロープテザーが有利とされている。

 本研究では、このうちロープテザーに対して自動押付力調整機構を搭載したクライマーの開発を行っている。ロープテザーをローラで挟み込んで摩擦力により昇降する構造を想定し、テザーへの押付力を調整して、自動で適切な押付力に制御するものである。

 ロープテザーはベルトテザーと異なり、押し付けの強さによって、テザーの断面形状が円形から楕円形に変化し、ローラとの接触面積が大きく変化する。ローラの押付力が大きいとき、すべりを抑えることができる反面、クライマーを駆動させるモータの負荷は増大する。反対に、ローラの押付力が小さいとき、モータの負荷を減らすことはできるが、すべりが大きく発生するという特性はベルトテザーと同じであるが、すべりによるローラの削れの影響はベルトテザーより大きく、その特性はより複雑であると考えられる。宇宙エレベーターのテザーとしては競技会などではベルトテザーが一般的であり、ロープテザーはあまり使用されていない。さらにロープテザーの押付力調整についての研究はまだ行われていないと考えられる。このため本研究では、基本特性の検証を行い、すべりや電費という効率を考慮して最適な押付力を自動的に実現するための機構や制御の有用性について理論的な面から検討している。

スパイラル推進機構を用いた姿勢制御クライマーの開発

 本研究室では宇宙エレベータークライマーの機構について研究を行ってきている。宇宙と地上を結ぶテザーとしては、地上付近では風などの環境の影響を受けにくいロープテザーが有利とされている。しかし、ロープテザーは風などの影響によりテザー周りに回転してしまう問題点がある。

 この問題に対し本研究室では、CMG(Control Moment Gyro)機構、リアクションホイール機構を用いた姿勢制御の研究を行ってきたが、いずれも飽和が避けられず、長時間の連続した姿勢制御を行えないことを確認している。また、これらの機構は重く、取り扱いが難しいという問題点もある。そこで、本研究ではローラをテザーに対して傾けることができるスパイラル推進機構を用いたクライマーの開発を行っている。スパイラル推進機構により傾いたローラは、ロープとの接触面で横方向に摩擦力を発生させ、クライマーにロープ周りのトルクを与えることができる。このクライマーを用いることにより、飽和のない姿勢制御がほぼ実現できており、さらに検証を行っている。

インフラ検査用H型クローラクライマーの開発

 本研究室では、宇宙エレベーター用クライマー技術を応用し、新規インフラ検査システムを構築するための自走式昇降機の開発を行っている。本研究で想定する検査方法では、検査平面に対し平行に2本のベルトを設置し、機械的に結合された2機のクライマーの間に様々な検査や補修用のユニットを搭載する。また、重量物の運搬なども想定し、鉄塔などでの補修作業での使用も可能とする。

 対象にしている検査方法では、2機のクライマーが同期して昇降を行う必要がある。そのため本研究では、検査ユニットを搭載した状態で安定した上昇を行うために駆動方式の比較を行っている。そしてローラ駆動方式よりもクローラ駆動方式の方が大きな負荷に対しても安定して昇降することを確認し、それを採用している。

 最終的に2機の機体を機械的に結合した昇降機を開発し、最適位置同期化制御を用いて、上昇実験による有効性の検証を行っている。

架空送電鉄塔を昇降する工事支援ロボットの開発

 架空送電線路においては鉄塔や碍子、架線金具等の異常点検や、設備の定期的な保守工事が必要である。この点検や工事は専門の習熟した作業員が鉄塔に昇塔して行っている。しかし、この方法では作業員の不安全行動により落下・感電等の危険がある。このため、地上には監視人が配置され、高所作業員の安全監視を行っている。しかし、地上からでは高所作業員までの距離が遠いため作業員の細かな不安全行動の視認が困難で、常に上を見上げる必要があるなど負担は大きく、長時間の目視は困難である。このためドローンに搭載したカメラによる点検方法なども検討されている。しかし、ドローン等の無人航空機は人(第三者)または物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の離隔距離を保って飛行させなければならない制限や、長時間の定点観測に向いていない、送電線に接触した際の損害が大きい、天候によっては飛行させることができないなどの問題がある。また監視以外の物体搬送などの支援は困難である。

 そこで本研究では今まで研究・開発を行ってきた宇宙エレベータークライマーを想定した自走式昇降機の技術を応用し、テザーの代わりにほとんどの鉄塔に設置されている高所作業員が命綱をつなげるエスコートレールをテザーと見なして自力で昇降する工事支援ロボットを開発している。そして、このロボットに搭載されているカメラから作業員の映像を地上の監視人に送信し、目視点検の支援を行う。さらにロボット独自でも作業員を監視し、不安全行動があれば監視人に警告するなどの支援を行うことを目指している。

*本研究は日本電設工業様からの受託研究となっております。

物体認識技術を用いた監視ロボットシステムの開発

 架空送電線路においては鉄塔や碍子、架線金具等の異常点検や、設備の定期的な保守工事が必要である。この点検や工事は専門の習熟した作業員が鉄塔に昇塔して行っている。しかし、この方法では作業員の不安全行動により落下・感電等の危険がある。不安全行動の例として、停電回線、充電回線が混在している鉄塔で充電回線に近づく行為や安全帯の未使用、資材工具類の落下防止処置を行っていない行為等がある。

 現在,鉄塔上部の作業員を監視し,事故防止の注意喚起をする特高近接作業監視人は地上から目視によって監視を行っている。地上から監視を行っているため、高所作業員の細かな不安全行動の視認が困難で、常に上を見上げる必要があるなど負担は大きく、長時間の目視は困難である。また、施工管理を行う工事指揮者も鉄塔上の進捗管理を行うとなると地上からの目視確認では難しい部分がある。

 これまで本研究室ではカメラとジンバルを搭載した鉄塔を自走する工事支援ロボットを開発し、高所作業員の行動を視認するのが難しい問題を解決してきた。本研究では、目視によるヒューマンエラーの発生を防ぐため,作業員の不安全行動の一つである充電回線に近づく行為をカメラ画像から機械学習を用いて自動的に判定して,作業員に危険を知らせる監視ロボットシステムを開発している。システムが作業員の監視をサポートすることで,地上監視員の負担軽減・事故防止が可能となる。

*本研究は日本電設工業様からの受託研究となっております。

架空送電鉄塔を昇降する重量物搬送ロボットの開発

 本研究室では、架空送電鉄塔上部への搬送作業を半自動化するための重量物搬送クライマーを開発している。高圧鉄塔における架空送電線工事では、作業員が鉄塔に登り、ウインチやワインダーで重量物を運ぶ。これには、工事の際、監視員を含めた3人以上の作業員が必要であり、山間部での重量物搬送による負担、施工環境により使用設備が限定されるなどの問題がある。

 本研究では、これらの問題を解決するために、本研究室で開発してきた宇宙エレベータークライマーの技術を用いて、架空送電線工事の作業効率化を図ることを目的とする。構想としては、重量物を乗せたクライマーが地上から鉄塔上部に張ったロープを昇降する。その際、自動速度制御と手動操作を組み合わせた半自動操作のシステムを想定している。これまでの研究では、駆動部の対向ローラ型とクローラ型について、それぞれのローラ配置による押付圧と保持可能重量の関係を検証している。現在は、対向ローラ型でのクライマー設計を行っており、ユニット構造を採用することで、駆動輪の数とその位置を自由に変更可能にしている。最終的には積載重量100kgのロープクライマーを目指しており、成功すれば国内初となる。

*本研究は日本電設工業様からの受託研究となっております。

アイリスロボットハンドの開発

 本研究室では、カメラレンズ絞りなどに用いられているアイリス機構を応用したアイリスロボットハンドを提案している。アイリス機構は全周囲からの開閉が可能な優れた特性を持つが、ブレードが薄く重なっているためこのままではロボットハンドとして用いることはできない。このためブレードに厚みを持たせて重ならないようにし、この機構をロボットハンドに用いている。この機構を用いたロボットハンドは、単純な機構で構成され、単一のアクチュエータで駆動が可能である。また全周囲から包み込むような把持が可能になるため、対象物の大きさや形状の変化に対応でき、精密な位置決めが不要などの特徴をもつ。また安価に製造や運用が可能で解析も容易などの特徴をもつ。

 本研究では摺動型と揺動型という異なった機構をもつアイリスロボットハンドを提案し、開発したロボットハンドの解析を行い、その特性と有効性の検証を行っている。また、アイリスハンドをエンドエフェクタとして用いるため、アイリスハンドの特性を活かせるような水平多関節ロボットアームも開発している。このようなアイリス機構を応用したロボットハンドの研究は当研究室オリジナルなものである。

側面開閉機構を有するアイリスロボットハンドの開発

 本研究室では、アイリスロボットハンドを提案してきている。これはカメラの絞り機構に使用されている機構をブレードの重なりがないようにして取り入れたロボットハンドエンドエフェクタである。単一のアクチュエータで全周囲多点把持を実現でき、対象物の断面の大小によらず同一の機構で把持が可能となるなどの特徴を持つ。しかしこの機構のままでは、本体側面からの把持が不可能であり、長い対象物の把持の困難さや、このロボットハンドを使用するロボットアームの把持動作の複雑化といった問題があった。

 そこで本研究では、直動運動により側面開閉をし、本体側面からの対象物の挿入と、全周囲把持を両立できる新機構アイリスハンドを提案している。このロボットハンドは側面開口状態から動作し、側面閉口状態、そしてブレード絞り状態という3つの状態を経て対象物の全周囲把持を行うことができる。

円錐型アイリスロボットハンドの開発

 本研究室ではアイリス機構を応用したロボットハンドを開発してきている。アイリス機構ロボットハンドは、単一アクチュエータで駆動可能、機構が単純、複数の対象物を同時に把持可能といった特徴を持つ。しかし、従来研究では把持時に機体の開口部内に対象物を挿入する必要があり、小型や扁平な対象物の把持が困難であった。また、ロボットハンドの指に該当するブレードは柔軟性を欠き、点接触による把持が多いため複雑な形状をした対象物の把持も困難であった。

 そこで本研究では、小型や扁平な対象物に対応するため、閉じた際に突出した形状となる円錐型アイリス機構ロボットハンドを提案する。さらに、複雑な形状の対象物に対応するため、ブレード先端に対象物の形状にフィットするフィングリップを用い、把持実験からその有効性を検証している。

アイリス多指ロボットハンドの開発

 本研究室では、ロボットハンドの機構を単純化しつつ,少ないアクチュエータで対象物の仕様や形状に広く対応できるロボットハンドとして,カメラレンズ絞り機構などに用いられるアイリス機構を応用したロボットハンドの提案を行ってきている。このロボットハンドは一つのアクチュエータで駆動し、対象物をその全周囲から同心円状に正多角形の形状を保持して多点で包み込み把持することができる。しかし、対象物を把持する部分(ブレード)はロボットハンドの機構内部にあり、機体の外面を構成する中空円板の中空部内に入る大きさの対象物しか把持できない。また、中空円板の厚みより小さい対象物も把持できないという問題点が見られた。

 本研究で提案するアイリス多指ロボットハンドは、揺動機構を用いたアイリスロボットハンドのブレードを機構外部に配置し、ブレードの先端部分にロボットハンド本体を構成する円板に対して垂直方向に伸ばした指を取り付ける新機構を有したものである。ブレードを機構外部に配置し、機構内部のギア比を調節することにより把持トルクと把持速度の調整が可能となる。さらにブレードの指はシリコ-ン素材にし、対象物の把持の安定化を図っている。このため、垂直方向に延長された指により,短小な対象物を摘むような把持が可能となっている。また、ブレードの先端のみに指を取り付けたことで、ブレード展開時に各指間には調節可能な隙間ができ、横置きの長方形対象物の把持が可能となっている。

アイリスハンドを搭載したドローンの開発

 ドローンは主にビデオカメラを搭載し、監視や点検などに活用されている。しかし、今後は搬送業務に用いられることが多くなると思われる。

 搬送用ドローンに搭載するロボットハンドには、グリッパ型のロボットハンドなどが提案されている。しかし、アーム展開時や対象物を把持した際の重心の変化が、ドローンの姿勢の安定性や運動性能に対して悪影響をもたらす。また、アクチュエータ数の増加などによる重量の増大も問題点となる。そこで、本研究室では屋内環境下でのロボットハンドを搭載した搬送用ドローンとして、アイリス機構ロボットハンドを搭載したドローンを提案する。本研究室で開発を進めてきているアイリス機構ロボットハンドの特徴から、ハンドに汎用性を持たせつつ、対象物を把持した際の重心変化も軽減可能となり、一つのアクチュエータで駆動可能なことから重量の増大も抑えることが可能となる。

 画像認識技術を用いた自動把持や障害物検知、SLAMによる自己位置推定と環境地図作成を行い、GPSが届かない室内でのドローンの自動飛行を目的としている。

アイリス機構を応用したホイール径可変車輪の開発

 本研究室ではカメラレンズ絞りなどに用いられているアイリス機構を応用したホイール径可変車輪を提案、開発してきている。アイリス機構は単一のアクチュエータで、同心円状に正多角形の形状を保ちつつ開閉が可能な優れた特性を持つ。そして、揺動機構を用いたアイリスロボットハンドのブレードを機構外部に配置し、ブレードの先端部分にロボットハンド本体に対して、垂直方向に伸ばした指を取り付ける新機構を有したアイリス多指ロボットハンドも提案している。

 このアイリス多指ロボットハンドは、外側に展開することも可能であり、本研究ではこの機構をホイール径可変機構に用いている。この機構を用いたホイール径可変車輪は、機構が単純で、単一のアクチュエータで駆動可能というアイリスハンドの特徴を引き継いでいる。また同型接地型のまま可変可能といった特徴を持つため、展開を考慮するほかの機構と比べると接地面での解析が容易である。

 本研究では、開発したホイール径可変車輪の解析を行い、実際に製作してその特性と有効性の検証を行っている。また、この車輪を駆動部車輪として用いたローバーロボットの開発も行うなど、ホイール径可変車輪本体とその応用という基礎から応用までを視野に入れた取り組みを行っている。

体動による旋回機能を持つ倒立振子型電動車いすの開発

 高齢者や障がい者だけでなく健常者でもショッピングモールや展示場など広い場所を移動する際や体調がすぐれないときなどには、座りながら移動できる電動車いすを使いたいと思うことも多い。

 本研究室では搭乗者の直感的な体の重心の移動により前進・後退・旋回の操作を行うことができる倒立振子型の電動車いすの開発をしてきている。倒立振子型にすることにより、慣れは必要であるものの、俊敏できめ細かい動きが体動によりイメージ通りに実現できる。

 本研究では体動により前後および旋回操作可能な電動車いすを実現する。既存の電動車いすの主車輪軸を車両の重心上部に移動し、前輪の補助輪を取り外すことにより倒立振子型にし、姿勢センサを用いて体動による前進・後退動作を行う。さらに座席部の左右に設置された空気クッションと空気圧センサを用いて左右の空気圧差から重心の偏りを検出するセンサを開発し(特許取得済み)、本センサから得られる空気圧差を用いてハンズフリーの左右旋回動作を実現する。この際、横傾斜路面に対して谷側に流れてしまう片流れに対して、左右の空気圧差に対して不感帯を変化させることで、水平面の走行と同様の操作性を実現する手法を提案している。

 また前輪補助輪を取り外したシステムでは、大きな径の主車輪のみで走行するため50mm程度までの段差乗り越えも可能となる。開発した倒立振子型電動車いすに対して外乱オブザーバを用いた制御系を組み込むことにより、搭乗者の体重の変化に対応が可能で、安定した走行を実現している。

電動車いすの体動による進行方向指示装置の開発

 本研究室では、体動で操作可能な倒立振子型の電動車いすを開発してきている。倒立振子型の電動車いすは、既存の電動車いすをベースとして,前輪の補助輪を取り外し,主車輪軸を車体の重心上部に移動させて倒立振子型にしたものである。動作としては,機体の姿勢の変化により前進・後退を行い、車いすの座面部の左右に設置された空気クッションの空気圧差を利用してハンズフリーの旋回を実現している。このため、俊敏な動作が可能で操作性は良好であったが、2輪であるため車いす搭乗者の慣れが必要という問題点があった。

 本研究では、これらの問題を解決するため,通常使われている電動車いすを対象とし、倒立振子型の電動車いすで用いていた空気クッションを用いて、車いす搭乗者の重心移動のみで前進・後退・旋回の操作を行うための進行方向指示装置の開発を行っている。空気クッションは体圧分布を調べることにより、前と左右及び後ろの4つの空気クッションから構成している。本装置を用いるとジョイスティックを使うことなく体動での操作が可能となっており、軽作業を行いながらの移動も可能になっている。本装置は既存の電動車いすにも容易に外付け可能で、現在使われている電動車いすへの適用も期待できる。

ボール&プレート経路制御装置の開発

 本研究室では,自動運転車両や工作機械で重要になる経路制御について、独自の経路制御手法を提案している。そして、これらを視覚的に表現することを目的としボール&プレート装置を開発し、独自の経路制御手法を組み込んで高い経路追従性能を達成している。一般にこのような制御に経路制御手法を組み込んでいるものはほとんど他には見られない。

 開発したボール&プレート装置は420×400×520mmの大きさで19型のディスプレイとタッチパネルからなるプレートに対して、4本の垂直に搭載されたリニアDCブラシレスモータ(LDM) が位置同期制御され、傾斜が与えられる。LDMは機械的損失が少なく、高い応答が得られるのが特徴である。プレートはフレキシブルジョイントにより、重心周りの慣性モーメントが釣り合っており、 LDMとマグネットジョイントによって接合することで、大きな回転角度を得られるとともに過大な入力が入った場合には接合部が分離されるようになっている。ボールの位置情報は、プレート部に搭載されている赤外線式のタッチパネルによって検出されている。

 上部プレート部の経路制御系でプレート目標角度を生成し、下部リニアモータは位置同期しながらその角度に追従させることで制御を行っている。人間がプレートを動かしてボールの軌跡を制御する場合には到底不可能な高い経路制御性能を実現している。

連結式リニアモータ制御

 リニアモータは、電気エネルギーを直接直動運動エネルギーに変換できる機構の総称である。回転モータを切り開いて直線的に展開したものと理解できる。したがってリニア直流モータ、リニア誘導モータ、リニアブラシレスモータなどの種類がある。

 リニアモータは高い加減速力が得られ、高速高精度な用途に適している。したがって、生産現場において高速高精度な搬送精度が要求される工程を中心に、リニアモータによる搬送装置が普及してきている。一方、従来のリニアモータはガイドおよび可動子を予め決まった寸法で設計・製造していた。このため製造工程が変更となると、リニアモータの再利用は困難であった。

 そこでリニアガイド側を連結式することにより、複数の規格化されたガイドを連結することで柔軟な搬送システムを構築することができる考えられる。しかし、連結時にガイド間のギャップが発生するなどの問題が生じることが予想できる。

 本研究では、連結式リニアモータを想定し、想定しうる問題点を洗い出したうえで、高精度な繰り返し位置決め制御を開発することを目的としている。

※本研究は、日本トムソン様との共同研究となっています。日本トムソン様からリニアモータ式の提供を受けております。