宇宙エレベーター昇降実験機システムの試作と制御






 宇宙エレベーターは基本的には高度3万6000kmの静止軌道上に位置する静止衛星からケーブルを垂らして、これを昇降して宇宙に行こうというものである。これが実現すれば、宇宙旅行が非常に簡単にでき、エネルギー問題も解決できるなど生活を一変させる可能性を秘めている。ケーブルの素材が実現のための障害だったが、最近これが解決されつつある。
 当研究室では、ロボットや制御の技術を生かして、昇降実験機を開発して機構や性能の研究を行っており、将来実際の宇宙エレベーターへとつながるのを夢見て研究を進めている。

 2009年度から宇宙エレベーター技術競技会に参加し、とくに2010年度の第2回技術競技会では参加15チームの中で見事に総合優勝を飾った。2011年度はミュンヘン工科大学で開かれたEuropean Space Elevator Challengeにも参加し、3rd PlaceおよびInnovation Awardを受賞した。その取り組みは研究室のみならず工学部プロジェクトや附属中高との連携としても広がっている。活動内容は新聞やテレビなどのマスコミでも広く取り上げられており、オープンキャンパスなどでの実演も行っている。競技会だけでなく研究面からも昇降実験機のローラーの押付力を可変とする滑り防止制御やジャイロを用いたい姿勢制御、屋内実験装置の試作と制御なども行っている。詳しくは下記を参照されたい。



 経路制御手法の開発と展開
 経路制御は工作機械やロボットなどの多軸メカニカルシステムにおいては必要不可欠な制御である。しかし、一般には各軸制御の結果として多軸制御を行っている場合が多い。多軸の制御の場合には、各軸の応答よりも経路や軌跡といった各軸の協調が重要であり、1軸の制御とは異なった制御としての経路制御について研究を行っている。回転座標変換と伸縮座標変換を用いて本質的な経路誤差の評価を可能とした最短目標点探索を用いた経路制御などの手法を提案し、2次元から3次元まで理論を拡張してきている。

 開発した理論は日本トムソン株式会社の協力を得て試作したリニアXYZテーブルにより検証している。NCフライス盤や後で示すフォースディスプレイ、ロボットカー、全方向移動車両、電動車椅子などにも応用して有効性の検証を行っている。成果は学会誌などにも解説として掲載されている。



 予見・予測制御の研究

 予見制御とは未来目標値や未来外乱などが既知の場合に、これらの情報を積極的に利用した制御である。
 メカトロニクスシステムにおいてはこれらの未来情報が既知である場合が少なくないにもかかわらず、通常の制御において未来情報はほとんど利用されていない。この予見制御について、最適予見制御系の設計法の提案およびその解析を行い、一般化予測制御との関係も明らかにしている。また予見・外乱抑圧制御、予見繰り返し制御、実時間予見仮想目標値設計なども提案しており、リニアモータを用いたシステムに応用してその有効性の検証も行っている。

 その成果は「ディジタル予見制御」の形で著書として刊行されており、中国語に翻訳もされており、学会誌などにも解説として掲載されている。最近は経路制御との融合も視野に入れて研究を行っている。



 形態可変型ロボットハンドの試作と制御
 従来のロボットハンドは指の本数、その位置ともに固定されているものがほとんどである。この指の本数や配置関係を作業対象によって可変にできる形態可変型ロボットハンドの開発を進めている。このロボットハンドはコアモジュールに指を6本まで自動的に着脱可能で、コアモジュール上を滑らかに移動できる構造になっている。この成果は日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会の優秀講演に選定されたこともある。

 現在はアームを含めて自動的に指の着脱を可能とするシステムの開発を行っている。また、対象物体に適応した指の本数を決める手法や把持手法の理論構築も行っており、理論と実験の両面から検討を進めている。



 ロボットカーの経路制御


 最近、自動車の電気自動車化と相まって自動運転が注目を集めている。本研究は自動車の自動運転を目指して、その経路制御について研究を行うものである。自動車などの車両は、非ホロノミック拘束を持ち,直接横方向に移動できない。このような非ホロノミックシステムに対しては多くの制御手法が提案されているが、三平らによって提案されている時間軸状態制御形を用いた制御手法は構造の簡単さ、拡張の容易さなどの点で優れた方法であり、線形システムに対して開発されている手法を容易に取り込める利点がある。

 しかし,この手法は直線経路にしか対応していないため、当研究室では提案している経路制御手法を組み合わせることにより任意曲線経路に拡張した手法を提案してきている。さらに、横すべりを考慮して経路目標値から車両の入力である実舵角を求めることで車両の幾何学的な任意経路を安定性を考慮して制御する手法を提案し、実車の1/10のモデルであるRoboCarを用いて実験により有効性を検証している。



 全方向移動車両の試作と制御

 一般的な車両は非ホロノミック拘束を持ち直接、横方向には移動できため、狭所などでは細かい移動ができない。このため、本研究ではオムニホイールを用いた全方向移動車両の試作と制御を目的としている。オムニホイールとは車軸を動かすことなく全方向への移動が可能な車輪であり、本研究室では4つ配置する全方向移動車両を試作している。

 この時、全方向移動車両は進む方向によって駆動する車輪の動きが複雑になるが、搭乗者の重心の移動で進行方向を指示し、レーザースキャンセンサでその動きをアシストし、経路制御手法を用いて人を乗せた状態で安全かつ円滑な走行を目指している。



 電動車椅子の半自動走行制御



 電動車椅子は高齢者や要介護者には自分の足に代わる便利なものであるが、走行操作にはある程度熟練を必要とし、操作のミスによっては事故が起こる危険性も存在する。このような観点から当研究室では室内走行を前提としてレーザスキャナを用いて自動走行が可能な電動車椅子を市販品から改造することで試作してきている。

 室内走行を前提とすると電動車椅子は進行方向が明確な所では自動走行を行い、交差点では停止して搭乗者に進行方向の指示を仰ぐような半自動走行支援を行うことが実用的であると考えられる。そのため、レーザスキャナを用いて検出されたデータから交差点を認識して、そこを基準点として座標系を構成し、任意経路に対する半自動走行制御を行うことを目的としている。このためにレーザスキャナによる交差点の認識を行い、時間軸状態制御形に上記の経路制御を組み合わせた任意経路に対する可変速経路制御手法を提案し、実験による有効性を検証している。



 仮想物体の力覚提示




 現在、仮想物体を認識する、つまりバーチャルリアリティという分野が盛んに研究されている。そのような中でも、人に対して力覚を提示することにより仮想物体を認識させる装置のことをフォースディスプレイといい、この技術は医療の遠隔治療などの様々な分野での応用が期待されている。
 力覚を提示するためには、動きが必要であり、このため上記の経路制御手法を用いて3次元空間上に仮想的な経路を与える。さらに力覚センサを使用したコンプライアンス制御を適用し、その経路上のバネやダンパの特性を自由に変えることにより、経路上のコンプライアンス特性を変化させることにより仮想物体の力覚を提示することを目的としている。

 現在、装置の制御が比較的容易なリニアモータを用いたXYZ テーブル式のフォースディスプレイを試作して実験的検討を行っており、リハビリ装置などへの応用を想定している。



 過去のテーマ

 セミアクティブショックアブソーバの緩衝効率の改善
 動いている物体が何かに衝突し、急速に停止しようとするとき物体には大きな衝撃が発生する。その衝撃を緩和させる装置がショックアブソーバである。

 本研究ではステッピングモータを用いてその調整軸を制御することによりオリフィス面積を変化させるセミアクティブショックアブソーバを試作した。このショックアブソーバに対して制御によりボトミングを抑えて抗力値を一定に保ち、高い緩衝効率を実現することを目指す。



 硬軟を有する仮想物体の力覚提示

 現在、仮想物体を認識する、つまりバーチャルリアリティという分野が盛んに研究されている。そのような中でも、人に対して力覚を提示することにより仮想物体を認識させる装置のことをフォースディスプレイといい、この技術は、医療の遠隔治療などの様々な分野での応用が期待されている。

 本研究では、装置の制御が比較的容易なリニアモータを用いたX-Y テーブル式のフォースディスプレイを用いて、本研究室で経路制御の手法として提唱しているベクトル分解経路制御と、力覚センサを使用したコンプライアンス制御を適用し、硬軟を有する仮想物体の力覚を提示することを目的としている。




 経路制御手法を用いたNCフライス盤による加工

 近年、複数軸を持つNC工作機に対して高速化、高精度化が要求されている。工作機械の場合,位置決め制御よりもむしろ経路制御が必要不可欠である。ところが経路制御を主として研究を行っている例はほとんど見られない。そこで本研究室では、本質的な経路制御を目指してテーブルの送り速度を一定にしたベクトル分解経路制御を提案し、これをNCフライス盤に適用して有効性を検討している。




 直線への伸縮座標変換を用いた3次元ベクトル分解経路制御
 経路制御とは、制御対象の位置の軌跡を時間に依らずに、目標値の始点から終点までの軌跡に追従させるものである。本研究では、実際に利用される頻度の高い3次元空間の経路制御への拡張を目的とする。静止座標系で表されたシステムを位置応答と同期した回転座標系に変換して、この座標上で目標経路の最短距離、つまり目標経路に対する経路誤差を評価し、さらに目標値の変化による経路誤差を抑制するために伸縮座標変換を用いる3次元ベクトル分解経路制御を提案している。本研究では、3次元空間上の任意曲線経路を3次元ベクトル分解経路制御を用いて直線経路に変換し経路制御を行うことを目指している。



 車椅子の自動走行のための交差点認識
 高齢者、障害者の介護支援を目的とし、市販されている電動車椅子を改造することで、電動車椅子付属のジョイスティックによる走行とパソコンからの命令による自動走行を両立できる電動車椅子を試作した。

 本研究は、180度レーザスキャンセンサにより周囲の環境をリアルタイムで認識し、障害物等があった場合に回避行動や壁伝い走行、交差点の分岐の判断などを的確に実現することを目的とする。



 3輪移動車両の試作と経路制御
 近年、工場内におけるロボット技術の進歩などにより、工場内や屋内などの限定された空間内で、無人搬送や工場内を巡回監視するロボットなどの作業用ロボットのニーズが増えつつある。本研究では、二輪および三輪型の車両について任意曲線経路への追従を可能とする経路制御について検討を行う。



 ロボットハンドにおける指の接触回避動作
 近年の産業界において, 多品種少量生産などの理由から汎用性の高いロボットハンドが要求されてきている。 そこで, 本研究室では任意形状の物体の把持を目的とした形態可変型ロボットハンドを製作してきた。このロボットハンドは, 指の配置及び本数を把持対象物に合わせて変えられる形態可変機構を備えており, 多様な形状と広範な大きさの物体を安定に把持できると考えられる。 さらに, 指以外のモジュールも装着可能である。本研究では, この形態可変型ロボットハンドの把持及び操り時において必要となる, 指相互の接触回避のためのプログラム的なモジュールを作成する。



 浮遊機構を備えた4足歩行ロボットの製作
 不整地で高い踏破性を発揮する脚型移動ロボットと、硬平地で高速な移動を実現する4足歩行ロボットの試作と制御を目的としている。これを実現するために、3自由度4組の自由度と搭載能力を兼ね備えた脚型ロボットTITAN-VIIIにホバークラフトを取り付け、足で地面を蹴ることにより移動させる。その際の脚の動かし方や歩行と浮遊の切り替えなどを制御することにより、効率的な移動をさせることを目的としている。


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