Fujimoto Lab

原子力耐震工学研究室
 (藤本研究室)

Nuclear Seismic Engineering Laboratory
 (Fujimoto Laboratory)
KU
神奈川大学
Mech_Eng
工学部 機械工学科

 藤本研究室の紹介
教 員
研究テーマ
  • 原子力プラントの耐震・制振技術および構造物振動を利用した振動発電手法の開発
  • 水圧駆動システムの機器(各種水圧制御弁,水圧アクチュエータ)の開発と制御

 我が国では,21世紀は地震の世紀と言われており,実際に各地で大地震が発生しています.西日本で発生している地震は,南海トラフ巨大地震の前兆現象でもあるため産業プラントやインフラ施設の耐震対策は喫緊の課題です.特に,原子力プラントの耐震設計は原子力プラント設計の中でもますます重要になって来ており,耐震安全性は 全ての原子力技術者にとって共通の設計課題となりつつあります.

 藤本研究室では,地震の揺れを遮断する免震技術,プラント機器・配管の地震時の揺れを低減する耐震・制振技術に関する研究を行っています.これらの技術は一般構造物にも適用可能な汎用技術であることから,原子力プラント機器を対象とするだけでなく,自由な発想で取り組みやすい一般構造物を対象とした研究も行っています.
 もう一つの主要研究として,振動発電手法の開発に取り組んでいます.一般建築物から原子力プラントまで設備が稼働すると,様々な振動が発生しています.この振動は設備自体の故障・トラブルを誘発したり,構造強度を劣化させる有害な現象です.この研究では,この振動エネルギーを,圧電素子を用いて高効率で電気エネルギーに変換する振動発電装置を開発するとともに,この装置とセンサーや発信器を組み合わせて,構造物の健全性把握のための電源・信号ケーブル不要のモニタリングシステムも開発しています.
 さらに,老朽化したインフラ施設や産業施設の腐食や材料疲労による構造強度の劣化を診断・予測する手法の開発も行っています.

 また,水圧駆動(アクアドライブ)システムのための各種水圧制御弁や水圧アクチュエータの開発や,それらを組み合わせたシステムの構築と制御も行っています.水圧駆動システムとは,流体を用いて機械の運動を制御するシステムの一種です.動力伝達媒体として,潤滑剤などの添加物を一切使用していない水道水を用いており,圧力水準としては 14 MPa 程度までを対象としています.電動方式や空気圧駆動と比較して動力密度が高く,かつ安全性や環境融和性が求められる用途において応用が期待されていますが,水道水の物理的特性が引き起こす諸問題の解決が研究課題となります.

 以下には,代表的な研究テーマを示します.


連絡先
住所
〒221-8686
神奈川県 横浜市神奈川区六角橋 3-27-1
神奈川大学 工学部 機械工学科
部屋
12号館 24室:藤本教授,38室:鈴木助教,311室:研究室
電話
045-481-5661(内線 3472:藤本教授,3484:鈴木助教,3486:研究室)
Fax
045-491-7915(総務課宛)

 複数次モード振動を低減するパッシブ型動吸振器に関する研究 ↑Top

Fig.1
図1 パッシブ型動吸振器による振動の低減

 本研究は,原子力発電所施設内の機器・配管に適したパッシブ型3次元動吸振器の開発を目的としています.

 動吸振器は錘とばねで構成されている装置で,3次元的に配置された原子力配管に発生する振動を吸収・消散するすることにより,地震時などによる大きな振動が発生しても,それを小さく抑えることが出来るようになります.

 現在は解析ソフトを用いた地震波応答解析評価と,試作した動吸振器模型を用いた振動試験による応答低減性能の評価を行っています.



 高減衰材を用いた原子力機器・配管の減衰特性向上に関する研究 ↑Top

Fig.2
図2 高減衰材の付加による減衰特性の向上

 一般に鋼製配管は減衰能が低く,地震時の揺れが増幅し,破損する恐れがあります.原子力プラント機器・配管の地震時の応答低減を図るため,高減衰材を用いてこれらの減衰特性を向上させる手法およびその際の減衰特性の評価手法の開発を目指しています.

 本研究では,配管の減衰特性を向上させるために,高減衰材として Mn-Cu 合金を付加する構造を提案するとともに,このような配管構造の減衰特性を有限要素法を用いた振動解析および模型配管を用いた振動実験により,高減衰材とその配置方法の効果を評価します.



 構造物振動を利用した発電手法に関する研究 ↑Top

Fig.3
図3 構造物振動を利用した発電

 橋梁やエンジン,ポンプ,コンプレッサなどが稼働する産業設備では,大きな振動が発生しています.この振動は橋梁や産業設備の破損・トラブルを誘発し,構造強度を低下させ破壊に至らせる有害な現象です.

 本研究では,このような構造物の振動時に支持部材に発生する変動力(振動エネルギー)を高効率で電気エネルギーに変換する高出力振動発電素子を開発するとともに,これを用いてセンサーや送信デバイスを駆動させ,構造物や設備の故障・破損検知のための電源供給や信号ケーブル不要の状態監視システムの開発を行います.

 研究内容として,積層PZT素子に正弦波振動を加えて発電を行う振動発電実験を行い,積層PZT素子の発電能力を評価しています.また,振動発電に関する理論から積層数の最適化を行うとともに,振動発電の応用としてセンサを駆動し,構造物の状態を監視するモニタリングシステムの開発も行っています.



 構造物の劣化診断手法に関する研究 ↑Top

 我が国においては,インフラ施設(橋梁,トンネル設備)や産業設備において老朽化が原因のトラブルや事故が多発しています.事故の発生前には様々な前兆現象が捕らえられおり,これを正確に把握できれば事故を未然に防止することが可能です.本研究の目的は,構造物の腐食や材料疲労による構造強度の低下を診断・予測する手法を開発することです.

 現在は,各種配管を長期にわたって腐食させた後,配管振動実験を行うことにより,その振動状態を計測・分析し,振動特性の変化を把握する実験を続けています.



 水圧制御弁の開発 ↑Top

 水圧駆動システムでは,水圧アクチュエータの動作を制御するために,水の圧力・流量・方向を制御するための各種制御弁が必要となります.これは,電動モータによる駆動システムにおいて,モータの動作を制御するためにモータに供給する電圧・電流・方向(正負)を制御することに相当します.

 電動モータを駆動するためのモータドライバは,通常そのモータとセットで購入するか,互換性のある標準品を入手することができます.しかし,圧力水準として 14 MPa程度まで使用可能な水圧用の制御弁は,現在市場に供給されているもののほとんどが単純な開閉動作をするもので,高精度な制御を行うための機器が十分に揃っていないのが現状です.

 油圧用の制御弁の部品を,水圧用として錆びない材料に変更すれば済むわけではありません.動力伝達媒体としての水道水は,工業上の特性が極めて悪いため,以下のような様々な問題を引き起こします.

◇ 高い飽和蒸気圧による問題
弁絞りにおけるキャビテーションの発生,キャビテーション壊食による機器寿命の低下,振動・騒音の発生,キャビテーション閉塞による弁の圧力流量特性の変化

◇ 低い粘性による問題
しゅう動部すき間を通る内部漏れ流量の増加(エネルギー損失の増加),しゅう動部すき間を小さくするための高精度な部品加工によるコスト増,狭いすき間寸法(数μm)以上の水中微粒子を除去するための汚染管理(コンタミネーションコントロール),振動減衰効果の不足による動特性の悪化

◇ 低い潤滑性による問題
しゅう動部の摩擦,摩耗の促進

◇ 化学的特性による問題
錆・腐食の発生,微生物の発生,運転可能温度の制限,水質(水の硬度)の管理

 上記の問題を解決するためには,油圧用の弁構造を参考にしながらも,水圧用として最適な構造・材質・表面処理などにする必要があります.また,水圧システム導入のための初期コストを抑制するためには,コスト低減も重要です.


 制御弁を大別すると,圧力制御弁,流量制御弁,方向制御弁の3種類があります.ここでは,開発中の方向制御弁の一種を紹介します.


Fig.5
図5 ロータリー型水圧サーボ弁の外観

 水圧駆動システムにおいて,シリンダなどのアクチュエータの運動を制御するためには,サーボ弁や比例弁などの方向制御弁が必要となります.本研究では,小型の水圧アクチュエータの運動を制御するために,小型で安価な水圧サーボ弁の開発を目的としています.

 従来の水圧用サーボ弁や比例弁にはスプール弁が使用され,そのしゅう動部は静圧軸受で支持されており,構造が複雑で高精度加工が必要です.本研究では構造を簡素化するために,回転型の弁板を使用し,模型用ブラシレスサーボモータを用いて弁を直接駆動する構造を採用しました.この構造により,従来の水圧サーボ弁と比較して大幅な小型化が可能となりました.弁単体の性能評価とともに,水圧アクチュエータの制御性能の評価も行います.



 水圧アクチュエータの開発 ↑Top

Fig.6a
図6a 270°揺動型水圧モータの外観

Fig.6b
図6b 270°揺動型水圧モータの構造

 水中作業用ロボットアームに組み込んで関節を直接駆動する用途を想定し,水中で動作する揺動モータを開発しています.90°揺動型と,270°揺動型の2種類を開発中です.水は潤滑性が低いため,モータ内部の圧力による偏荷重が主軸を支持する軸受に作用しないことが理想的です.そのため,モータ内部の圧力による力が回転対称である必要があります.90°揺動型は実現が比較的容易ですが,270°揺動型は構造に工夫が必要となります.

 本研究で開発した270°揺動モータでは,1つの主軸に3枚のベーンを取り付けた構造となっており,偏荷重が軸の両側から加わるようベーンの位相を 180°ずらして配置するとともに,中央のベーンの幅は両側のベーンの2倍にしています.これにより,主軸に作用するラジアル荷重が相殺し,常に平衡状態となります.



 水圧アクチュエータを用いた機構の制御 ↑Top

Fig.7
図7 水圧揺動モータを用いた
ロボットアームの概念図

 水圧シリンダや,上述した水圧揺動モータを用いて3自由度以上の空間リンク機構を構築し,その制御を行います.これは,福島第一原発の廃炉に伴う重作業や,作業機械の移動機構への応用を想定しています.

 また,人間の動きに追随して重量物を運搬するためのパワーアシスト機構の開発も行っています.動力源として,持ち運びが容易な高圧洗浄機の使用を想定しています.また,電磁的ノイズの多い環境下でも使用できるよう,電気信号を使用しない機械的システムの構築を目指しています.



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